カント的「根本悪」を描いた日本映画:「相棒 劇場版 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」を観た。
なかなかポテンシャルが上がらない日々が続く。五月病かな?!
久々、家人と二人で映画を観に行く。いやはや何年振りかな~
夫婦割り引き料金、二人で2,000円とは安い。「夫婦のどちらかが50歳以上であれば」との条件付である。
窓口で勇んで免許証を見せようとしたら、「証明書は結構です。」と言われる。証明書など見せずとも二人合わせて、100歳以上と言うことは解かるのでしょうね…!?
些か、鼻白む。(家人は笑っていました。)
和泉聖治さん、久々の監督作品なだけに大いに期待した。和泉聖治監督は1972.8月に「情事の報酬 」(ミリオンフィルム)というピンク映画で監督デビュウー。一般映画でのデビュー作は渡辺裕之のデビュー作「オン・ザ・ロード」(1982)である。私はこの頃からのファン。
ピンク映画作品も何本か観ているがそれはさておき。
ピンク映画で苦労してきただけに、硬質で骨のある作品が多い。このような監督は中々、恵まれない。
ピンク映画は85作品以上あるのだが、一般映画の数は寡作で、意外に知られていない。「沙耶のいる透視図」(1986) は知っている方が多いと思う。
的場浩二の「悪名 AKUMYOH」(2001)以来の一般映画作品である。☆☆☆☆:「相棒・劇場版」一言!良い出来の作品である。傑作である。本年度のベストワンになる可能性が高い。TV版との関係から、ハンディがあるが例えば「踊る大走査線」に比較しても、造り込みの質が高い。
ストーリーはともかくも、脚本家の社会を俯瞰する視点が素晴らしい。
私は以前、「日本人は匿名という卑怯者が多く、日本の歴史は卑怯者の歴史である。」と書いた。また、「自分はヤバクナイところに身をおきながら、蔭でコソコソ、知った風な口を敲く。そして、身元が割れ、少しでも矛先が自分に向きそうになると汚い尻尾を巻いてコソコソと逃げ出す。これが大衆となると手が付けられない。身元不明匿名集団の有象無象の輩が日本の世論をあらぬ方向へと捻じ曲げていく。」とも書いた。
まさに、その点を社会的・政治的に問題視した作品に仕上がっているのだ。
実は、この問題はカントの言う「根本悪」と大きく関連する。「根本悪」とは何か、を説明する気はないが、作品の視座は「根本悪」にある。
カントは当然の事ながら、現代の事象を予言していたのである。そうであるからこそ、哲学であり、カントが哲学者たる所以であるのだが。
ストーリーを語ることは出来ない。しかし、西田敏行が、久々に涙が出るような素晴らしい演技をしていることを付け加えたいと思う。