アンダーレイテッドの道を歩み、貧困の中で死んでいった“Mo!”エルモ・ホープ:「Meditations/Elmo Hope Trio」
世の中には、類稀なる才能を持ちながらも、終生、世間からも認められず人知れず亡くなっていく人たちがいる。
しかし、最も印象に残っていたのはライツ・アウト! ジャッキー・マクリーンとの競演であった。タイトルチューンの冒頭はエルモ・ホープの真にブルージーなピアノソロから始まる。まるで、深い海の底から鳴るかのような音色のピアノである。
この印象は、この「Meditations/Elmo Hope Trio」で、いっそう強烈になる。
エルモ・ホープのピアノには派手さが無い。ましてや軽やかさもない。まろやかさやミディアム・ハッピーはあっても重く内向的、自省的である。聴こえてくるピアノはなんともいえない温かみと人間の哀しみである。
哀しみと温もりを持ったピアノなのだ。
しかし、彼の内向的・自省的かつ、独創性という確固たる個性は、聴く者が自ら積極的に近づいて行かなければ理解できないものである。
「JAZZは聴く者が決める」という言葉はこの意味においてのみ正しい。
つまり、派手さや明るさというものを持ち合わせなければ、いくら才能や実力があっても、一般からは理解も評価もされないということなのである。
彼のJAZZは聴くものをして落ち込ませるようなJAZZではない。むしろ希望をも持たせてくれるようなJAZZである。しかし、滅多に近づき易いJAZZではないのである。
これがアンダーレイテッドの宿命である。しかし、彼の芸術と生き様、JAZZは、それによりいささかも過小評価されるものではない。
彼の演奏と楽曲は、深い海の底から中々浮かび上がれない蒼い哀しみを抱きながらも、キラキラと陽光煌めく青く広い大海原を目指す深海魚のようである。
「ホープは痛ましさと貧困と全くの無理解のうちに死んだ。彼はまだ年老いていなかった。あとに残されたのは妻と二人の子供達。そしてレコードに刻まれた約130曲の演奏。それらは現在ほとんど聴けないものばかりだ」(マーク・ガードナー)