「人は自分の性格にあった事件にしか出会わない。」小林秀雄:菊地雅章セクステット - 再確認そして発展
「人は自分の性格にあった事件にしか出会わない。」小林秀雄…ある意味、「宿命」を想起させる冷たい言葉ですね。
城山三郎氏曰く、どのような事態にあっても、それはその人なりの現象であり、「自分の性格ゆえのことだから」と受けとめられる人はそれを乗り越えていく。逆に、そこでめそめそしまう人は、それが本当に「事件」となって人生に暗い影を落とす、という意味だそうです。
受け止める個の修練が求められているようです。
人間はいつも個として個ゆえに再確認し発展することが求められています。
一度、小林秀雄氏の「様々なる意匠」に立ち戻って検証したいと思います。
菊地雅章が新たなオリジナルメンバーを率いてフィリップスに移籍した1970年の作品です。
このツインピアノにしつこく絡んでいく峰厚介のエモーショナルなアルトサックス。村上寛と岸田恵二による強烈なツインドラムと池田芳夫の強靭なベースがバックアップに廻るより、よりパワフルに演奏を牽引していく。
全てのパートが渾然一体となり、カオスを形成し、スピリチャルかつ挑発的なタイトル「再確認そして発展」を生み出していきます。
菊地雅章氏は自らライナーノーツの中で次のように語っています。
再確認そして発展:
「我々の周囲において、ほとんどのジャズは音楽の意味を失いつつある。
「我々の周囲において、ほとんどのジャズは音楽の意味を失いつつある。
我々音楽するものにとって、より新しい表現手段、あるいはチラッと垣間みることができた未知の音宇宙は避けがたい魅力をもっている。が、我々はまた、それを追及することのみに固執すれば大変な危険が待ち受けていることもよく知っている。そして、それらの手段においての段階的な目的の一つに到達し得ただろうと自覚した時に襲ってくる無常感をもよく知っている。が、それにもかかわらず、我々は容易にその魅力にひきこまれ、振り回され、音を形式化しその結果音楽の形骸にしか過ぎなかったものに、音楽の幻をみ、さらに新しいものへと無限の堂々巡りを続ける。
(中 略)
…表現手段は音楽をするプロセスのほんの小さな一部分にしか過ぎない。そしてもっと残酷なことに、音楽は我々人間の生の全てではないということである。
今や、我々は、音楽の起源までさかのぼって、音楽の何があるかを求め、ジャズの歴史をふり返ってそれのルーツを考えなければいけないのではないだろうか。そしてそれがジャズのみならず音楽全般におけるヒューマニズム回復への道と思われる。」
「再認識と確認」と言う言葉に込められた至極、真っ当で正当なる認識です。
ここで、日本のモードジャズそしてモダン・フリーを牽引する菊地雅章の新たなる伝承者としての菊地氏が誕生したのです。
(曲目リスト)
1. テネイシャス・プレイヤー・フォーエヴァー
2. ローミング・イン・ダークネス
3. ラヴ・トークン
4. サイレンス・ホライゾン・アンド・ア・ドーン
5. ピース・トゥ・ピース
6. ヤング・ブラッズ
1. テネイシャス・プレイヤー・フォーエヴァー
2. ローミング・イン・ダークネス
3. ラヴ・トークン
4. サイレンス・ホライゾン・アンド・ア・ドーン
5. ピース・トゥ・ピース
6. ヤング・ブラッズ