2008年を締め括る3冊の本(その2):伊波普猷「沖縄よ何処へ(世界出版)」
今年も沖縄に4回訪れた。ミディアム・リピーターである。二回は仕事、後二回はプライベートであった。
今月には高校時代の友人を案内して「ひめゆりの塔」「平和の礎」「識名園」「福州園」そして沖縄博物館へも行った。これらは、はや何度も何度も訪れているところであるが何度行っても飽きは来ず、再びの思いを新たにする。
沖縄の歴史は、日本と沖縄と戦争の歴史に思いを馳せ、思いを新たにする場所でもある。
沖縄の観光客数が400万人を超えた頃。バブル後のリゾートブームを背景に沖縄は大いに脚光を浴びる。そしてそれは「沖縄移住」という言葉に置き換えられていく。
2003年、『ちゅらさん』がNHKの朝ドラで高視聴率をあげた頃からだろう。この年、観光客数も一気に500万人を突破。県外からの転入者も2万5千人にのぼり、文字通り、沖縄移住ブームが巻き起こった。98年から03年の5年間に人口が毎年2500人ずつ増えるような時代を迎えたのである。
那覇市の人口の伸び率が日本一だった年もあり、沖縄は文字通り、国内最大の移住地として沸騰するような人気を集めた。しかし、ここへ来て、移住ブームにも若干の陰りが見えていることも確かだ。移住しようが私のようにリピーターになろうが人はそれぞれである。
しかし、いずれにせよ沖縄の歴史、抱えてきた問題、そして戦争と沖縄のことを知らずして沖縄を訪れ、語ることはできない。
沖縄の歴史や文化を県民にわかりやすく広めるとともに、沖縄の人々に誇りと勇気をあたえた。沖縄学を立ち上げ沖縄の人々に大いなる誇りと生きてゆく勇気を与えた功績は測り知れない。
浦添城跡に伊波の顕彰碑がある。友人の東恩納寛惇が刻んだ言葉に「彼ほど沖縄を識った人はいない 彼ほど沖縄を愛した人はいない 彼ほど沖縄を憂えた人はいない 彼は識ったが為に愛し愛したために憂えた 彼は学者であり愛郷者であり予言者でもあった」とある。
琉球・沖縄を訪れる人たち、考える人たち、全ての立ち返るべき場所であり、数々の評価がある中、また乗り越えるべき人物である。
この「沖縄よ何処へ」は絶好の入門書である。